- 腰痛
- 投稿者:福岡志恩病院 園田康男
はじめに
日本は腰痛が有訴率第一位(もっとも多い症状)であり、日本人の8割以上が生涯において腰痛を経験しています。原因とし歩行形態の変化、4足歩行から2足歩行となり重力による体幹にかかる負荷が増大したことがその理由の一つとして挙げられます。腰痛の原因には様々なものがありますが、今回は代表的な腰椎疾患である腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症について説明させていただきます。
<腰椎椎間板ヘルニア>
病態:年齢とともに椎間板が変性し椎間板の外を囲む繊維輪の後方部分が断裂、椎間板のなかみである髄核が断裂部分から後方へ逸脱することにより神経根、馬尾が圧迫されて発症します。ちょうど使い込んだ座布団の中綿(髄核)が外に飛び出しその中綿が神経を圧迫するとイメージしやすいかもしれません。
疫学:腰椎椎間板ヘルニアは、人口の約1%が罹患し、手術となる患者さんは、人口10万人あたり46.3人/年と言われています。また、男性に多く、好発年齢は20~40歳代で好発高位はL4/5及びL5/S1となっています。
症状:通常は、片側の下肢痛が多いですが、時として突出したヘルニアが非常に大きい場合、両側で症状が出現します。
検査:レントゲンには椎間板ヘルニアそのものは写らず確定診断にはMRIが必要となります。
治療:腰椎椎間板ヘルニアの治療において、重要なのは下肢症状の有無です。
腰椎椎間板ヘルニアがあっても神経症状がなければ手術となることはほとんどありません。神経の圧迫がなければ多くは、保存的治療(薬、コルセット)にて改善するためです。下肢症状がある場合、保存療法が基本でありますが、手術療法も考えられます。症状が持続する場合や症状が強い場合に選択肢として挙がりますが、多くは3ヶ月程度の安静加療を行い症状が残存した症例に対し行います。ただし麻痺、膀胱直腸障害があれば早急に手術となります。当院での手術は、内視鏡下ヘルニア摘出を行っており、傷が小さく入院期間が10日程度と短く社会復帰が早いことが利点としてあげられ有用な手術と考えております。
<腰部脊柱管狭窄症>
病態:脊柱管を構成する骨性要素や椎間板、靭帯性要素などによって腰部の脊柱管や椎間孔が狭くなり、馬尾あるいは神経根の絞扼性障害をきたして症状の発現したものを脊柱管狭窄症と言います。
症状:神経根の症状として片側性の下肢やお尻の痛み(時にしびれ)や馬尾神経の症状として下肢やお尻にしびれやだるさ、排泄障害、間欠性跛行(歩いたり立ち続けたりしていると、下肢に痛みやしびれが出て歩けなくなり、しばらく休むと症状が無くなる。)といった症状の出現の可能性があります。
検査:レントゲンにて骨の棘やズレ(不安定性)の有無を調べます。神経の圧迫の有無は、MRIにて検査を行います。
治療:腰部脊柱管狭窄症の治療もまず保存的治療を行います。神経根の障害は、薬物療法や神経根ブロックにて治療を行います。馬尾神経の障害は、薬物療法や硬膜外ブロックを行います。保存療法にて症状の緩和がない場合、手術治療の適応となります。手術療法には神経除圧術、固定術があり概ね下の図のごとく手術選択を行います。
このページを見られている患者さんの中には病院で手術を進められている方もいらっしゃると思います。手術といえば腰が引けるかもしれませんが、少なくとも現状を十分に把握し手術がどんなものか合併症を含め理解する必要があります。
当院では年間300例の脊椎手術が行われております。手術を行うかどうかは別として病態を理解する上でお役に立てればと考えております。
平成25年2月