- 膵臓癌について
- 投稿者:浜崎外科整形外科医院 院長 浜崎 恵
〔はじめに〕
膵臓は胃の後ろ、背骨の前にある細長い臓器で長さは約20㎝ほどです。右側を頭部、左側を尾部、中央を体部と呼びます。膵臓では消化液(外分泌)、ホルモン(内分泌)が作られていますが、消化液は膵管という細い管を通って、肝臓から走る胆管と合流し十二指腸に流れ出ます。ホルモンは血糖をさげるインスリンや逆に血糖をあげるグルカゴンなどで、これらは血液の中に分泌されます。膵臓にできる癌のうち90%以上は膵管の細胞から発生したもので、これを膵管癌といいます。他には、腺房細胞癌、島細胞癌などがあります。
膵臓癌は難治性の癌で、早期診断や治療がいまだに難しいことが知られています。そのうえ原因もはっきりとは解っていません。膵臓癌と解った時にはすでに手遅れということが多いのです。
〔症状〕
腹痛、背中の痛み、体重減少、黄疸などの症状がみられますが、膵臓癌に特有のものではありません。比較的、特有な症状は黄疸です。黄疸では、身体や白目が黄色くなったり、身体がかゆくなったりします。黄疸は、膵頭部癌の初期症状としてしばしばみられます。
〔診断〕
膵臓癌の診断には以下のような検査があります。
1. 血液検査
膵臓癌では血液のアミラーゼや腫瘍マーカーのCA19-9,CEAなどが上昇します。しかし、進行してから上昇することが多く、小さな癌の発見には役立ちません。
2. 腹部超音波検査
エコー検査とも呼ばれます。身体にほとんど害がないため何回でも容易にできます。漠然とした消化器症状の方にはまず行われるべき検査です。しかし、肥満の方や反対にやせ過ぎの方など患者さんによっては膵臓が見えにくいことがあります。
3. CT検査
X線を用いたコンピューター断層撮影で、身体を輪切りにした映像を作成します。最近では解像力の高い改良型が開発され、膵臓の小さな病変の診断がより正確にできるようになっています。臓器を鮮明に描出するために、造影剤という薬を注射しながら撮影することがあります。
4. 内視鏡的逆行性膵胆管造影検査
ERCPと呼ばれなす。内視鏡を十二指腸まで運び、膵管と胆管の出口に細い管を差し込み、造影剤を注入して膵管や胆管の形を調べます。診断に有用ですが患者さんにはかなりの負担があり膵炎を引き起こすことがあります。検査時に膵液を採取して細胞の検査や癌遺伝子の検査をおこなうこともあります。
5. 超音波内視鏡検査
内視鏡の先端に超音波装置が装着されています。胃や十二指腸を通して膵臓を観察するため、より近くから詳しい映像が得られ、小さい病変の診断ができます。
6. 血管造影検査
足の付け根の動脈から細い管を挿入して、造影剤を注入し、膵臓周囲の血管を撮影します。膵臓の周囲の血管を撮影することで、癌の診断や拡がりを把握し、外科手術ができるかどうかもこれで判断します。
7. 経皮経肝胆道造影(PTC)
膵臓癌によって胆管がつまると黄疸がでます。これを閉塞性黄疸と呼びます。つまった胆管が太くなっている場合には、超音波で観察しながら肝臓の中に針を刺し、これを利用して細い管を胆管の中に入れます。この管から造影剤を注入すると胆管がどこまでつまっているかわかります。これをPTCといいます。
〔治療〕
外科療法が膵臓癌の治療法の基本です。その他、放射線療法、化学療法(抗癌剤)などがあります。
1. 外科療法
癌のあるところを切りとる外科的切除法です。膵頭部に癌がある場合は、膵頭十二指腸切除といって膵臓の頭部から体部の一部にかけてを胃の一部、十二指腸、小腸の一部、胆のうなどとともに切除します。膵尾部にある癌がある場合には、尾側膵切除といって膵臓の体部、尾部と脾臓を切除します。
2. 放射線療法
放射線で癌細胞を壊そうとする治療ですが、通常は身体の外から放射線を照射する外照射を行いますが、手術中に腹部の中だけに放射線を照射する術中照射も行われることがあります。
3. 化学療法
抗癌剤を使って癌細胞を殺そうとする治療です。抗癌剤を点滴する全身化学療法や肝動脈などの動脈に直接抗癌剤を送り込む動注療法などがあります。
4. その他
その他、温熱療法、免疫療法、遺伝子療法などが試みられていますが、現在のところあまり効果は期待できていません。