- 血管病変
- 投稿者:中原内科クリニック 院長 中原 俊尚
今回は動脈の血管について考えてみましょう。動脈とは弾力があり、心臓のポンプ作用によって人間の全臓器(脳、心臓、肺、肝、消化管、腎)に酸素を運ぶ血管です。動脈に病変ができると様々な病気になります。脳や心臓では脳神経細胞や心筋細胞に再生能力がないために壊死し、死に至ることもあります。また、高血圧、高脂血症、糖尿病などがあると、脳や心臓の血管内面の内皮細胞の障害で動脈硬化により血管の狭窄が起こります。狭窄が起き、内腔が狭くなると、流れが悪くなって運動、精神的ストレスの負荷で酸素欠乏状態となります。脳血管では、段階的に症状が進んでいき、脳梗塞(脳血栓)を起こします。また、心臓の心房細動などにより、心臓内血流が悪くなって心臓内で血栓(血の塊)を形成し、この血栓が脳血管に飛ぶことによって脳梗塞(脳塞栓)を引き起こすこともあります。脳梗塞には、脳血栓症と脳塞栓症があり、脳病変部により、片麻痺、言語障害、視力障害、運動失調、眼球運動などの症状が起こります。
心臓では、冠動脈の動脈硬化の痙攣による血管の狭窄が引き起こす虚血(酸素欠乏)のため狭心症が起こります。狭心症には、冠動脈の動脈硬化で血管の狭窄中に運動をすることによって酸素欠乏となる労作時狭心症と安静時に精神的ストレスによって、冠動脈の痙攣が起きて酸素不足になる安静時(異型)狭心症の2つのタイプがあり、冠動脈の閉塞した病変が心筋梗塞です。脳、心臓以外にも梗塞(腎梗塞、脾梗塞)が認められ、症状が気付かないことも多々あります。
頭蓋内出血には、硬膜外血腫、硬膜下出血(血腫)、クモ膜下出血、脳内出血があります。血管には大きい血管、小さい血管、毛細血管まで内皮細胞に覆われており、血液が血管外に出ない構造になっていますが、高血圧、高脂血症、糖尿病などの病変により、内皮細胞の結びつきが悪くなって、脂質が血管壁内に侵入し、その結果動脈硬化を起こし血管が弱くなり、出血します。小さい血管でも、様々な物資の血管内沈着によって出血が起こります。クモ膜下出血は、脳動脈瘤の破裂により発症します。頭蓋内動脈は弾力線維が一層しかなく、動脈瘤部分は、弾力線維の断絶があって壁が弱いので出血します。若年者では、脳動脈奇形により発症します。
最後に、血管病変の予防のため、食事や運動に気をつけて高血圧、高脂血症、糖尿病を改善し、健康体の獲得をお願い致します。
平成23年10月