- 貧血について
- 投稿者:神代病院 内科 中村 栄治
貧血とは、ヘモグロビン量が減少し、組織に有効な酸素が供給できなくなった状態であり、易疲労感、動悸、息ぎれなどの症状をきたします。貧血の中で頻度の高いのは鉄欠乏性貧血であり、若年者の多くの貧血がこれです。鉄分の補給がからだの成長に追いついていけず、不足することで、貧血をきたしやすくなります。もともと健康でも、美容目的で無理なダイエットをしていたり、食事の好き嫌いの多い人、過度の運動をしている人は鉄欠乏性貧血をきたしやすくなります。
最近顔色が悪くなったり、スポーツをしていて以前より体力が急に落ちたなと感じた場合、貧血の合併を疑い、病院受診されることをお勧めします。もし、鉄欠乏性貧血と診断されても、大きな基礎疾患がなければ、まず生活習慣の改善に努め、必要であれば、鉄剤服用することで貧血は改善します。
しかし、中高年で貧血を指摘された場合は、単純な鉄欠乏性貧血だけでなく、貧血をきたす基礎疾患を合併している頻度が高くなります。まれに悪性疾患合併の可能性もありますので、必ず病院で二次精査を受けて下さい。仕事が忙しいからといって、貧血があるのに病院受診もせず放置したり、市販の貧血治療薬を服用し続けて癌の合併に気付かず、何らかの症状が出現したときに病院受診しても、そのときは手遅れになっているかもしれません。
貧血は診断名ではなく症候名です。従って貧血の治療のためには、貧血をきたした原因を精査することが重要です。貧血を疑う症状があったとしても、必ずしも貧血を合併していない場合もあります。よく患者さんが貧血で倒れたとか、顔面蒼白になったといって病院受診されることもあります。しかし、起立性低血圧による症状の場合もあり、症状のみで貧血があると断定はできません。逆に慢性的に貧血になった場合は、重度の貧血でも意外に自覚症状の乏しい場合もあります。今まで定期的に健診を受けていて異常が指摘されず、今回の健診で初めて貧血を指摘された場合は、何らかの基礎疾患を合併している可能性があります。胃・十二指腸潰瘍、子宮筋腫、あるいは大腸がんなどの悪性疾患による貧血の可能性もあります。
余談ですが、最近は国の医療費削減政策で患者さんの医療費の負担が増加しています。それでますます病院離れの傾向となっています。またせっかく年一回の健診を受けていて、二次精査を指摘されても放置されている人もいます。病気があまり進行しないうちに治療開始できれば、結果的に治療期間が短くなり、治療費もあまりかからない場合もあります。これからは一人一人が病気を予防していく意識が重要です。自分の健康管理のために健診もきちんと受けましょう。もし自分のからだに不調を感じた場合は、いつでも気楽に相談できる「かかりつけ医」をもっているといいと思います。
平成19年3月