一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 長生きしていいことある?
  • 投稿者:神代病院 中村 栄治

 私は診察中、御高齢の患者さんとよく雑談をします。「これからも元気で長生きして下さい」と話しかけると「長生きしてもあまり良いことはない」と返事をされる方が多いようです。ある御高齢の患者さんは「先生、早くあの世にいける注射をして下さい」と言われます。半分冗談だとは思いますが、私も返答に困ってしまいます。「コロッといく注射をしたら私がお縄になるので、次回の診察日までに名案を考えておきます」と私も冗談まじりに返事をしています。しかし次回の診察日になると、また同じ会話の繰り返しになります。

 長生きして良いことがないと感じるのはなぜでしょうか。配偶者や子供たちに先立たれてしまい、孤独を感じながら生きていくのが辛いのかもしれません。若いときから不自由なく一人暮らしをされていた方も、年とともに次第に身体の自由がきかなくなり、社会から支援されるようになるのを辛く感じる方もいるかもしれません。何か家族のため、社会のために貢献したいと思っても年とともに自分の思い通りのことが出来なくなることもあります。三世帯同居で、ときどき孫と遊んだり面倒をみたりしていたお年寄りも、次第に出来なくなる方もいるでしょう。同居している子供からは親が年老いてしまうと身体を気遣い、孫のことは心配しなくていいと言われます。しかし本人としては、孫と関りが無くなってしまうと寂しくなり、次第に生きる意欲も無くなるかもしれません。

 高齢者でも日常生活が不自由なく出来る人から、寝たきりの人まで様々で個人差があります。しかし本人にまだやれる可能性があるのに、家族や社会が一方的に本人の出来る役割や仕事を取り上げてはいけないと思います。私も高齢ですが何とか仕事を続けております。若い人のように何でも出来るわけにはいきませんが、仕事を続けられるのが生きがいです。
 私もいつか脳卒中で倒れ仕事が出来なくなり、病院や施設のお世話になるかもしれません。そのときもし、会話が可能であれば、私の入院か入所している医療、介護スタッフと色々お話したいと思います。そのときは私が医療従事者として長年働いてきた経験を活かし、患者サイドの目線に立って若いスタッフの方に色々アドバイスしたいと思います。まわりのスタッフからは、「また口うるさいジジイが何か言っている」と言って煙たがれているかもしれませんが(笑)

 

令和6年10月

 

 

 

 

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