一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 骨粗鬆性脊椎骨折
  • 投稿者:さがら整形外科 院長 相良 正志

骨粗鬆症は、骨の強度が低下してもろくなり、軽微な外力(立った姿勢からの転倒やそれ以下の外力)で容易に骨折を起こす病気です。それによって起こる骨折を骨粗鬆性骨折と言います。骨粗鬆性脊椎骨折には、椎体がつぶれるだけの「圧迫骨折」と骨片が神経の通る管の中に飛び出す「破裂骨折」があります。

骨粗鬆性脊椎骨折の症状

骨粗鬆症が原因で起こる脊椎骨折では、多くは突然、腰や背中のいたみが起こります。転倒等のきっかけがある人もいますが、思い当たる原因がないまま激しい腰痛が起こることもあります。発症初期、非常に強い痛みのため寝起きが不自由で、寝返りが困難となります。慢性期になると背骨がつぶれたことによる姿勢異常(腰曲り状態)によって慢性の腰背部痛が残ることがあります。椎体の後壁がつぶれ、骨片が神経を圧迫すると腰痛だけでなく、下肢への放散痛や麻痺がおこり、足が動かない、おしっこが出ないなどの神経症状が出ることがあります。

骨粗鬆性脊椎骨折の診断

通常はレントゲン検査で診断できますが、ごく軽微な変形や全く変形のない場合もあり、また、変形が新しいものなのか、古いものなのかわからない場合もあります。このような場合は、MRI検査が必要です。また、最初は骨に変形がなくても、あとになって徐々に骨がつぶれてくる場合があるので、痛みが持続するときは何度かレントゲン検査を行う必要があります。

骨粗鬆性脊椎骨折の治療

足の痛みや麻痺などの神経症状がない場合は、原則的にまず保存的治療を行います。保存的治療は、現在ガイドラインがなく、各施設の経験に基づいて行われていますが、体幹ギプス固定とコルセットを用いた治療が最も成績が良かったと報告されています。それでも、13%の症例は偽関節や麻痺の発症で手術治療が必要となる症例があるようです。
手術治療は、十分な保存的治療を行っても痛みが取れない場合や足の麻痺が出現している症例で行われます。神経症状がない場合は、経皮的椎体形成術(骨折した椎体の中に骨セメントを注入して椎体を安定化させる方法)やBKP(Balloon Kyphoplsty:つぶれた椎体を丈夫な風船である程度押し広げて空間を作り、その中に骨セメントを注入する方法)が行われます。神経症状がある場合は、金属のスクリュウーやロッドで椎体を固定し神経除圧術も行われます。

症状安定後の治療

骨粗鬆症が原因で起こる脊椎骨折は、一度起こると一年以内に再度、他の部位に発症する可能性が高いと報告されています。骨粗鬆症の治療には、骨吸収を抑制して骨からカルシウムが逃げないようにする薬を使いますが、骨折の治癒を遅らせる作用もあり、脊椎骨折が治ってからこの薬を使います。脊椎骨折は、高齢者にとって寝たきりを引き起こす重大な病気のひとつです。早期に適切な治療を行い健康寿命を伸ばしましょう。

平成26年10月

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