- 高血圧
- 投稿者:井手胃腸科内科医院 院長 井手 一敏
今回は家庭血圧の有用性を中心に高血圧についてお話します。高血圧の基準が以前は収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血90mmHg以上でしたが、最近は収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上に変わっています。
(1)降圧目標について
高齢者の降圧目標は収縮期血圧140mmHg未満かつ拡張期血圧90mmHg未満となっています。若年、中年者は収縮期血圧130mmHg未満かつ拡張期血圧85mmHg未満です。糖尿病患者、腎障害患者は収縮期血130mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満です。血圧は低ければ低いほど脳卒中や心筋梗塞などの心血管合併症が起りにくいので良いという考え方になってきています。
(2)しかも24時間にわたって十分に血圧を下げることが大切とされています
診察室で測る外来血圧と家庭で測る家庭血圧に差がある場合があります。家庭血圧は正常で外来血圧が高くなる、いわゆる白衣性高血圧は積極的に治療しなくてもさほど心配はないとされています。逆に外来血圧は正常で家庭血圧が高くなる場合、これを正常血圧という仮面をつけた高血圧という意味で仮面高血圧と呼ばれています。仮面高血圧は適切な治療が必要です。仮面高血圧は健康診断で血圧が正常といわれている人にも見つかり、ヘビースモーカーや仕事が多忙でストレスの多い人に多くみられるといわれています。
一方、すでに高血圧の治療を受けている人にも仮面高血圧はみられます。外来血圧が高ければ、医師は薬を追加するなどの対処ができますが、仮面高血圧では一見治療がうまくいっているようにみえるため、気づかないまま放置されてり脳卒中や心筋梗塞などの心血管合併症が起こやすくなります。
仮面高血圧にはいろいろなタイプがありますが、よくみられるのは早朝に血圧が高くなる早朝高血圧です。心筋梗塞は午前6時から10時の時間帯に多発するといわれており、早朝高血圧はほかの仮面高血圧と比べて脳卒中や心筋梗塞を起こす危険性が特に高いといわれています。
早朝高血圧には夜間低値の血圧が早朝覚醒前後に急激に上昇して高血圧に至るモーニングサージと、もうひとつは夜間睡眠時の血圧下降が消失したノンディッパー、あるいは夜間睡眠時に血圧が上昇を示すインバーテッドディッパーの2つのタイプがあります。両者とも心血管病のリスクとなりうると考えられています。
早朝高血圧を発見するためには血圧を家庭で測ることが大切です。家庭用血圧計は上腕で測るものを使い、朝と夜の2回測定します。朝は起床後1時間以内、排尿後、座位1~2分の安静後、降圧薬服用前、朝食前に、また夜は就床前、座位1~2分の安静後に測定することが推奨されています。診療所で測る外来血圧では収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血90mmHg以上が高血圧ですが、家庭で測る家庭血圧では収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上が高血圧です。測定法はいろいろあるようですが、測定回数は2分ほど間隔を空けて2度測定し、緊張が解けて低い値になることが多い2度目の値を血圧ノートに記録するのがよいと思います。この記録した血圧ノートをかかりつけの医師にみせて下さい。
現在よく用いられている降圧薬は効果が24時間持続する1日1回服用するタイプで、朝食後に服用することが多いと思います。しかし効果が24時間持続しないケースもあり、外来を受診する時間帯には薬が効いて十分に血圧を下がっていても、翌朝の服薬前に効果がなくなり血圧が高い状態にもどってしまって早朝高血圧となります。降圧薬を服用していて家庭血圧を記録した血圧ノートから早朝高血圧になっている場合は担当医に相談して持続性の高い薬に変えたり、服用するタイミングを変えて就寝前に服用したり、服用する回数を変えて1日2回に分けて服用したりなど対処法を考えてもらって下さい。家庭用血圧計で測定した家庭血圧を記録した血圧ノートのデータが治療上大変役に立ちます。
平成17年4月