一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 高齢者の自動者運転事故の話題
  • 投稿者:神代病院 リハビリテーション科 伊藤 博明

 リハビリの担当をしておりますので、自動車運転に関する事で脳卒中後の運転再開時に診断書が必要であり、それを担当しております。

 高齢者の自動車運転事故の話題が多く聞かれますので、それに関することを書いてみます。

 

2021年の大きい自動車事故を起こした運転者の年齢

1位:16~19才(10万人当たり1043.6件)

2位:20~24才(10万人当たり 605.7件)

3位:85才以上 (10万人当たり 524.4件)

4位:25~29才と80~84才

 

 事故を起こした運転者を年齢別に分けたのが上の通りです。4位の25~29才と80~84才が同じ程度の件数で、高齢者の事故が特に多いとは言えないと思います。若い人の事故のほうが多いと思います。マスコミが高齢者の事故を大きく取り上げて報道するので、自動車事故は高齢者に多いと、皆さん認識されて70才過ぎになると家族から免許証を返上しませんか?と言われることが多いようです。事故率は若い人と変わらないなら、ちゃんと検査を受けて、認知症にはなっていない、注意障害もない、などを確認しておけば、運転を続けても良いのではと思っております。

 2001年(平成13年)の法改正で知的障害者や身体に障害のある者は運転免許試験に合格すれば免許を取得出来るようになりました。(それ以前は障害者は車の運転が出来ませんでした)。ただし免許申請時に意識を失ったことがある、けいれん、麻痺を来したことがある、日中活動中に眠り込んだ事がある。などを質問用紙に記入して提出する必要があり、これは正直に申告しなかったら罰則があります。病気や症状を記入した場合、臨時適性検査を受けることになります。また75歳以上の免許更新者は運転技能検査と認知機能検査を受ける必要があります。一定の違反歴がある人は運転技能検査を受けて認知機能検査と高齢者講習を教習所で受けねばなりません。

 2022年5月より認知症の検査は認知症のおそれあり、とおそれなし、二つのどちらかの判定になりました。今までは、認知症のおそれ(第1分類)、認知機能低下のおそれ(第2分類)、認知機能低下のおそれなし(第3分類)の三つだったのが二つになり簡単になりました。

 新しい認知機能検査は「時間の見当識」(受験当日の年,月、日、曜日、時・分を記入)が20点、「手がかり再生」では(戦いの武器、体の一部、昆虫、野菜、楽器、電気製品、動物、台所用品、文房具、果物、鳥、大工道具、乗り物、衣類、花、家具)の16種のイラストの内4種を1分間で覚え、それを4回して16種全部の覚えている物を記入する(この時は手掛かりなしで見ただけ)。その後に上記の手がかり(野菜、文房具など)が書かれているのを参考にして再度記入する。16種が全部書けたら80点になり合計で100点満点となる。再度記入した16種のうちの7個合えば36点以上となる。時間の見当識で20点取ればあと少し手がかり再生が書ければ良いようになる。以前の検査で第1分類の認知症のおそれは49点以下で、合格は50点以上でしたから、7/16が合えば良いので、ずいぶん易しくなりました。最近は認知症のおそれに該当して医師の診断書が必要になる方が大幅に少なくなりました。

 

 

令和6年12月

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