一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 働く女性の健康
  • 投稿者:松尾医院 院長 浦江 美由紀

近年、高齢化・少子化の傾向に伴って働く女性が増えてきました。かつて働く女性の病気と言えば、貧血や肩こり、眼性疲労などで,これは食事時間が不規則であるとか、デスクワークや単純作業、同一姿勢の連続から発生するものでした。
ところが、最近増加しているのは、いわゆる「心身症」と呼ばれる一連の症状です。これは精神的な要因(ストレス)が引き金となり、身体に諸症状を発現させる症候群で、その治療にも精神的なケアを必要とするものです。
この外、「過敏性大腸炎」―大事なイベントを前にすると急に腹痛や下痢を起こす疾患、「メニエール症候群」―めまいや吐き気を主症状とする内耳に起因する疾患、「十二指腸潰瘍」なども増加しています。

特に目立つのが「月経不順」です。女性がストレスを強く受けると、視床下部、下垂体といった中枢神経系に機能の異常が起こり卵巣ホルモンが低下し、無月経―(三ヶ月以上無月経が持続する状態) 稀発月経―(月経周期が40日以上、60日以内の月経異常) 頻発月経―(周期が24日以内)過多月経―(月経時の出血量が異常に多い) 過少月経―(出血量が異常に少ない) 月経困難―(月経時の下腹部痛や腰痛等の痛みを中心にして嘔気、嘔吐、下痢,頭痛、悪心等の随伴症状等の為に社会生活に支障があり、医学的治療を必要とするもの ) 月経前緊張症―(月経前数日から10日間程度、周期的に発来する不定愁訴症候群)などさまざまな症状を起こします。
OA機器の導入により、人との会話が無く,一日中デスクワークをしている女性がうつ状態に陥ったり、無力感に悩まされる「OA症候群」の女性も増加しています。

● ストレスを生む時代の背景  
第一に生活リズムの乱れが考えられます。この状態が持続すると、食生活のリズムが乱れ、寝つきも悪く不眠となり、生活のサイクルも乱れて、「神経性胃炎」「頭重感」に悩まされることになります。社会的背景の第二として「スーパーウーマン症候群」があります。家事も仕事も完璧にこなそうとしてストレス性疾患に陥る症候群を言います。これは人に任せられない性格に加えて、家事その他をサポートしてくれる人がいないために、燃えつき状態となり,月経不順やイライラ、食欲不振、うつ状態に陥ることをいいます。
この様な場合、そのストレスについて相談できる相手を持つことでストレスを乗り切る事が出きると言われています。

●妊娠
妊娠は、働く女性にとって人生における重要な出来事であリ、その後も長期に渡り、「育児」という重要かつ大変な努めが待っています。「仕事か?家庭か?」というジレンマに遭遇する、働く女性が一度は悩む問題です。
近年,妊娠中及び出産後も働き続ける女性が増加しており、職場において女性が母性を尊重され、働きながら安心して子供を産み育てられる条件を整備することが急務となっています。
男女雇用機会均等法、労働基準法(産前休暇は6週間・多胎妊娠では14周間)、育児・介護休業法(育児や家族の介護を行う一定範囲の男女労働者について、深夜業の制限)等の改正や創設がされています。

妊娠中の症状に関する措置として 「妊娠悪阻」つわりの強いもので嘔吐が激しく栄養状態が悪化する)休業(入院加療)「妊娠貧血」血色素量9g/dl未満)休業(自宅療養)「子宮内胎児発育遅延」子宮内において胎児の発育が遅れている状態負担の大きい作業の制限、勤務時間の短縮または休業「切迫流・早産」休業(自宅療養または入院加療)「浮腫」(起床時に、下肢(すねのあたりを指で押すと陥没する)、上肢(手指のこわばり。はれぼったい。指輪がきつくなる)、顔面(額を指で押すと陥没する。まぶたがはれぼったい)のむくみが認められ、かつ1週間に500g以上の体重増加がある場合)軽症(浮腫が全身に及ばない)勤務時間の短縮等、重症(浮腫が全身に及ぶ)→休業、その他「蛋白尿」、「高血圧」など について改正労働基準法における母性保護措置が規定されています。

21世紀が性により差別されること無く、能力を十分発揮できるとともに安心して子供を生み・育てられる社会になりますように!

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