- 過敏性腸症候群
- 投稿者:渡辺内科胃腸科医院 院長 渡辺 正俊
腹部症状が長期間にわたって続いているにもかかわらず、いろいろな検査をおこなっても目立った異常がみられないような時には、過敏性腸症候群が疑われます。
原因として(1)消化管の運動異常(2)消化管知覚過敏(3)心理的異常 などが考えられていますが確定的なものはなく、これらが複雑にからみ合って症状が起こると考えられています。
症状としてはほぼ全員に便通異常がみられ、下痢,便秘、あるいは下痢と便秘が交互に起こったり、兎の糞のようにコロコロした便になったり、粘液の多い便になったり、さらにはいつまでも便が残った感じがしてスッキリしない(残便感)、しょっちゅうトイレに行きたくなる(便意頻回)などの症状があります。ただし痔などの合併症がないかぎり、大腸癌などのように便に血が混じることはありません。
このほか腹痛(部位が一定せず、排便によりよくなることが多い)、腹部膨満感、ゲップなどの症状があります。また多くの患者さんでうつ症状などの精神的症状がみられます。
これらの症状は多少なりとも誰でもみられる症状ですが(例えば、旅行などに行ってトイレが変わると便が出なくなるなど)、多くは一時的で短期間でよくなるのに対して、過敏性腸症候群の患者さんでは数ヶ月、時には数年にわたって続きます。
このため患者さんはあちこちの医療機関を転々とし、いろいろな検査を受けますが異常なしとされるため、医師に対して不信感を抱く人もみられます。
過敏性腸症候群を診断するには詳しい問診、特に便通に関する詳しい問診を必要とします。そのうえで今の症状を起こすような他の病気がないかどうかの検査をおこないます。
過敏性腸症候群では検査に特有な異常がみられないため、いわゆる除外診断というのをおこなうわけです。
尿検査、血液検査、胃・腸のX線検査なしは内視鏡検査、腹部超音波検査、さらにはCT検査などが必要となることもあります。
治療については薬物療法のほかに心理面からのアプローチが必要ですが、いずれにしても即効的なものはなく徐々にしか症状の改善はみられませんのであせるのは禁物です。
難治性でやっかいな病気ですが、けっして生命にかかわるようなものではなく、いずれはよくなるものですので根気よく治療を受けて下さい。