- 全身疾患と目の深い関係
- 投稿者:広瀬眼科医院 院長 廣瀬 真恵
全身疾患によりいろいろな眼症状、あるいは所見が起こってきます。
「生活習慣病」とよばれる糖尿病や高血圧では、網膜の血管にまず変化が現れ、進行して放置すると失明に至る場合もあります。その他、血液疾患や自己免疫疾患でも網膜の血管が障害されることもあり、甲状腺機能亢進症では眼球突出や様々な眼所見が知られています。また、サルコイドーシスやベーチェット病などの全身疾患がぶどう膜炎という眼の病気から発見されることもあります。
〔高血圧〕
高血圧は心、腎、脳、大動脈などの血管障害を合併する慢性疾患です。高血圧の人はほとんどが無症状なので検診などにより早期に発見し、治療、管理していくことが必要です。頭痛、めまい、肩こりなどの症状もありますが高血圧の治療の目的は、心、腎、脳、血管などの合併症の罹患率や死亡率を減少させることにあります。食事療法を主体とした生活習慣の修正を行ない、不十分であれば降圧剤による治療が必要になってきます。
さて、眼底は、身体の中で唯一、動静脈血管を直接観察できる部位ですが(眼底検査)、高血圧になると、眼底に特徴ある所見が現れます。網膜血管の異常(狭細・口径不同・反射増強)や網膜出血、浮腫、白斑です。程度にもよりますがこれに「網膜靜脈閉塞」「網膜動脈閉塞」「網膜細動脈瘤」「虚血性視神経症」を合併すると急激な視力低下が起こります。
〔65歳男性、網膜静脈閉塞症〕 | 〔84歳女性、細小血管瘤破裂〕 |
〔糖尿病〕
糖尿病では眼底の病気である「糖尿病網膜症」が有名で、中途失明者の原因疾患の第一位を占めますが、その他にも「眼球運動障害(突然モノがだぶって見える)」「角膜症(黒目の表面が剥がれて治りにくい)」「白内障」「虹彩炎(ぶどう膜炎)」などがみられます。いずれも局所療法(目の治療)のみならず、血糖をコントロールするという基本の治療を続けることが大切です。特にまだ網膜症が発症していない方や初期網膜症の方は血糖コントロールこそが病気の発症や進行抑制に最も効果的であることを知るべきです。現在、汎網膜光凝固術や硝子体手術や緑内障手術の進歩により、重症網膜症や血管新生緑内障の視力予後は改善されましたが、極度の視力低下は免れない場合が多くあります。社会生活を良好に送る視力を維持するには重症網膜症にならないように初期からの血糖コントロールが大切です。
53歳男性糖尿病網膜症 視力1.2 |
51歳男性糖尿病網膜症 視力0.4 |
44歳男性、角膜上皮剥離 |
〔血液疾患〕
眼底の網膜出血や浮腫の患者さんで内科の先生に診察を依頼すると、時に重症の貧血や紫斑病、あるいはたいへん稀ですが白血病であることがあります。血管や出血の形で推察はするのですが、原因疾患の治療(内科治療)が根本的治療となります。
〔その他〕
急に老眼が進んだり、目が乾きやすくなったり、瞼が下がってきたりするのは、疲れや寝不足だけが原因ではなく、甲状腺の病気や自己免疫疾患(リウマチやシェグレン症候群など)かもしれません。目が充血して霞む時に眼科でぶどう膜炎といわれたら全身の検査をしなくてはならないこともあるのです。
尚、写真の例は当院を受診なさった時、全身の病気のことは御存知ないか未治療の方たちで、眼科での治療とともに内科の治療も開始しました。