一般社団法人 小郡三井医師会

人は皆、元気で長生きしたいものです。しかし年を取るといろいろ病気がおこります。私はお年寄りを診察することが多いのですが、長寿で元気に通院されている方を診ると『長生きできてうらやましい』と思います。しかし本人としては必ずしも満足されていないようです。長生きしたために、配偶者や子供に先立たれ孤独を感じながら生きている方、あるいは家族と同居しているが自分が長生きしたために家族に負担をかけていると悩んでいる方などがいます。人は長生きできても生きがいがなければ空しいものです。今の時代は個人主義的になり、他人に対する思いやり、特にお年寄りを敬う気持ちは薄らいでいるように感じます。仕事も合理化、効率化が優先され、何らかの理由で能力が低下した人はすぐリストラされる時代です。年功序列の精神も無くなりつつあります。人は年を取ると気力も体力も衰えていきますが、それでその人の価値がなくなるものとは思いません。若い人には分らない経験、人生観がお年寄りにはあるはずです。会社・企業が存続していくために効率第一主義になるのはやむをえませんが、日本社会が会社の延長になって欲しくはありません。年老いた人、仕事を引退された方の生きがいが持てない社会にはなってほしくありません。人はみな年を取り、いつまでも若くは無いのですから。お年寄りに優しい気持ちで接することができれば、全ての人に思いやりを持てるものと信じております。