一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 動脈硬化症について
  • 投稿者:丸山病院 仲敷 健一

動脈硬化とは、動脈壁の肥厚・硬化・機能低下を示す動脈病変のことで、その動脈硬化を基盤に引き起こされる様々な病態の総称が、動脈硬化症であります。
動脈硬化には下記のような3つの分類があり、それに伴う病態について触れてみたいと思います。

nakasiki201602011) 粥状硬化(アテローム硬化)
動脈血管は、内膜・中膜・外膜と層状構造を呈していますが、その中で血液側の内膜に病変がみられるものです。内膜の硬化や粥腫(プラーク)形成することが特徴になります。このような病変を形成した場合、臨床上問題となる疾患は、冠動脈の場合は冠動脈疾患であり、脳血管であれば非心原性脳梗塞、中型以上の動脈であれば大動脈瘤、末梢動脈であれば末梢動脈疾患などがあります。一旦発症すると、死に近づきやすい非常に怖い疾患がこの中に多く含まれています。

2) 中膜硬化(Mönckeberg型動脈硬化)
中型動脈にみられ、中膜の輪状石灰化が特徴的であるが、内腔の狭窄は生じないため、臨床的には意義は少ないとされています。

3) 細動脈硬化
全身の細動脈にみられ、高血圧との関連が重要視されております。臨床的には、脳出血や腎硬化症、ラクナ梗塞を来すとされています。

上記のように一旦動脈硬化が全身の血管に進行してしまった場合、大きく改善することは難しいため、動脈硬化は予防することが大事となってきます。

動脈硬化を予防するためには、その危険因子を管理する必要があります。危険因子とは、①脂質異常症、②高血圧、③糖尿病、④慢性腎臓病、⑤喫煙、⑥冠動脈疾患の家族歴、⑦動脈硬化性疾患(冠動脈疾患・非心原性脳梗塞・末梢動脈疾患)の既往、⑧加齢・性別が挙げられています。またこのような危険因子を包括的に管理する必要があります。
動脈硬化性疾患リスク評価のためのスクリーニング法としては、空腹時静脈採血を行うことで、上記①~④の有無をチェックすることができます。さらに、⑥⑦の病歴を把握することが重要になってきます。非観血的検査としては、足関節上腕血圧比(ABI)や脈波伝搬速度(baPWV)、心臓足関節血管指数(CAVI)、頸動脈エコー法が挙げられます。このような検査は比較的簡単に評価が可能です。
上記のような検査結果よりリスクの層別化を行ってゆきますので、もし健診結果等で上記に当てはまる疾患を有している場合には、是非、日頃かかりつけ医の先生に相談されることをお勧め致します。

nakasiki20160202 動脈硬化性疾患の予防の根幹は、生活習慣の改善であります。その点について、2012年版動脈硬化性疾患予防ガイドラインに記載があり、そこから抜粋しますが、以下の7つの項目があります。
1.禁煙し、受動喫煙を回避する。
2.過食を控え、標準体重を維持する。
3.肉の脂身、乳製品、卵黄の摂取を控え、魚類、大豆製品の摂食を増やす。
4.野菜、果物、未精製穀類、海藻の摂食を増やす。
5.食塩を多く含む食品の摂食を控える。
6.アルコールの過剰摂取を控える。
7.有酸素運動を毎日30分以上行う。

nakasiki20160203具体的には、動物性脂肪に多く含まれている飽和脂肪酸(豚脂・牛脂など)やコレステロールの摂食を減らし、青魚を代表とした魚類に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸を積極的にとるようにしたらよいとされています。さらには、植物性食品の大豆・大豆製品やイソフラボンの摂食もよく、緑茶・コーヒーなども合わせて、冠動脈疾患の発症抑制と関連しているとの報告もみられます。野菜・果物に含まれるカリウム、ビタミンC、ビタミンB6の摂取量が冠動脈疾患の発症抑制と関連するという報告もみられます。
食塩摂取は6g/日未満を目標にしたらよいです。
アルコールに関しては、過剰摂取すると、血圧を高め、肝臓での中性脂肪合成を更新させるようですので、控えめがよいと思います。
最後に運動については、有酸素運動が良く、速歩やスロージョギングが勧められます。1日30分以上を週3回以上あるいは週180分以上を目指してみたらよいかと思います。筋力量が低下した高齢者の場合、室内でできるベンチステップ運動も勧められていますので、是非取り入れてみてください。

平成28年2月

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