一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • C型肝炎は撲滅する?飲むだけで、C型肝炎が治る時代へ
  • 投稿者:神代病院 高田 晃男

昨年、肝臓の分野では劇的なインパクトをもつ治療法が登場しました。以前は、C型肝炎の治療には、副作用の多いインターフェロン注射が必須でしたが、2014年9月からは経口(飲むだけ)でC型肝炎ウイルスを根治できる薬(抗ウイルス剤)が保険適応となりました。
この薬は臨床試験の段階で85%の著効率(体内からC型肝炎ウイルスを消失できる人の割合)と報告されてましたが、治療開始前に患者さんのC型肝炎ウイルスの遺伝子の型を調べて適応例に使用すれば、95%ぐらいの著効率まで改善してます。副作用は感冒様症状や肝機能上昇等がありますが、インターフェロンと比べれば軽微なものばかりでした。実際に私も10人ほどの患者さんに治療しましたが、ほとんどのかたが元気に治療可能で、C型肝炎ウイルスは消失しており、ベルリンの壁が崩壊したような衝撃でした。私が研修医だった20年前のころは、C型肝炎の患者さんにインターフェロン治療をしても、10%弱の著効率であり、副作用も強く、治療導入には2週間ほどの入院が必要で、その後も約半年間、週3回インターフェロン注射のための通院が必要でした。実際このような治療は60歳以下の働き盛りの方にはなかなか困難であり、また慢性肝炎程度あれば、無症状のことが多いこともあり、放置されるかたも多く、肝硬変に進行したり、発癌される患者さんを多数診てきました。もちろんインターフェロン治療もその後進化、熟成し、2013年度に発売されたインターフェロンと2剤の抗ウイルス剤を併用する治療では、90%の著効率まで治療効果は改善してました。しかし残念なことに、副作用は強く(皮膚炎や貧血等)、70歳以上の高齢者や、体の小さい女性では十分量の薬が使えないこともあり、治療適応は一部の限られたかたでした。去年発売された、経口剤のみの抗ウイルス剤での治療は、2週間に1回通院すれば、入院の必要はありません。takada20151201また、日常生活が自立していれば80歳以上のかたでも治療可能であり、初期の肝硬変の状態のかたも治療適応になっています。2015年11月段階で、3つの製薬会社から薬の作用部位が異なる、経口剤のみの抗ウイルス剤が発売されおり、我々肝臓病専門医は、C型肝炎ウイルスの遺伝子の型も考慮した上で、患者さんにあった薬を使うようにしてます。

但し、一つ重要なことを言っておかないといけません。それは、C型肝炎ウイルスが消失することで、100%発癌しなくなるわけではなく、発癌リスクが低下した状態になるということです。一般的に軽度の慢性肝炎と肝硬変の10年発癌率は、慢性肝炎が10-15%、肝硬変が70%と言われてますが、インターフェロン時代のデータですが、ウイルスを完全に排除することで、10年発癌率は慢性肝炎が1-3%、肝硬変が15-30%まで改善すると言われてます。よって、C型肝炎ウイルスが消えれば、肝癌は明らかにできにくくなりますが、できないわけではないので、C型肝炎ウイルスが消失した後も、半年に1回は超音波検査等を受けて、肝臓の状態の点検を受けることが重要です。定期検査をすることで、仮に将来肝癌ができたとしても、小さい早期癌の段階で見つかる可能性もありますし、ウイルスが消失することで、肝炎の進行はほとんど止まりますので、肝機能が保たれ、様々な肝癌の治療を受けれる可能性があるからです。
takada20151202 最後に、日本にはまだC型肝炎患者さんが約150万人はいるといわれており、C型肝炎に罹患していること自体に気づいてない患者さんも、数十万人いると言われてます。現在は過去に、C型やB型肝炎ウイルス検査を受けたことのない方は、肝炎ウイルス無料検査実施医療機関では無料で検査(採血)を受けれますので、自分が感染しているかが心配な方は、まず肝炎ウイルス検査を受けてみてください。

平成27年12月

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